すべて藤くんになる

いきなり「すべては藤くんになる」と伝えられて、あなたの頭の中には疑問符しか浮かばないことだろう。ここで書かれる「藤くん」とは、BUMP OF CHICKENのボーカルの、前髪が長い、細身の人を指している。しかしながら、現実の「藤くん」に関して私は知らないことが多すぎるため、イメージ・象徴としての「藤くん」について書いてあるだけで、悪意もなにもないことを最初に断っておく。いや、断らしておくれ、断わらしてくれないかと、横山大寛の描いた「無我」のさまよう赤子のような姿と魂でお願いをする。
参考画像:横山大観画・"無我"
横山大観

私のitunesの中にはバンプ(オブ・チキン)のベストアルバムと最新作”RAY"が入っており、適度に拝聴している。独特の声と、疾走するようなメロディライン、私が中学生の時に作詞をしていた友達が見せてくれていたノートに書かれたような、終わらない思春期の甘酸っぱさを含んだまだ熟していない固い果実のようなリリック。

BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]
BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]

RAY
RAY

最近のバンドは違いがよくわからないという知人に私の知っている知識だけで説明をした。「最近の」といっても、バンプアジカンフジファブリックストレイテナーの4バンドについてだった。

それで私の答えは簡潔だった。「すべては藤くんに統合される段階に過ぎず、4つに見えるけれど、最終的には「藤くん」に収斂してゆく過程にすぎないと。

藤くんは細身の前髪が長いバンドマンらしいバンドマンのように見えるが、その前髪は「目付きが悪いのがコンプレックスで」というエクスキューズによって隠そうとしているが、かなり上部にある、邪眼を隠すために存在しており、台風の時に起こる強風を受けても、そよぐだけで肝心の邪眼までは見えず、絶えず邪眼が開かないように風の吹いている方向に常に正面を向けなければならないという生きづらさを抱えている。

敵が目の前に現れた時に第一段階として、藤くんは警告する前に、相手の心を中学生のこじらせた少年もしくは純粋な女の子の気持ちにさせようと、中学生のレベルに合わせた”唄”で和らげようとする。
「俺はとにかくタンポポと空と手と星空となくしてしまった夢が大好きだ。敵ではない」と伝える。それでも心を閉ざし、否定的な大人には、夏休みや冬の寒さについて語り、最後に「ラララ、ラララ」と歌う。しかしながら、ゴールデンウィークもお盆休みもなく、ささくれだった大人は「ブラックだーブラックだー、蟹工船で親方にしごかれてんだよこっちは」と伝わらない。

理解し合えない、悲しい大人と、星の王子さまのような藤くん。凝り固まり、こじれてしまった大人の心を開くために、一人の力ではどうにもならないと、後ろにCGでバンドのメンバーを書き割りのように描き、ターゲットが違うバンドをその細身の体に取り込み、統合してゆくことを決意したのである。

まずはアジカンが抱えている人数も、ファンの数も多いので、アジカンを取り込もうとした。アジカンホビット族に属し、真面目で力持ちだが、いかんせん魔法が使えない。そろそろバンドにも飽きたし、ボーカルもGOTCHと自分で自分のあだ名を英語表記にするほど心が弱っている上、自然を愛したり、大きな敵、ビッグ・ブラザー的なものとの戦闘しているように見える。その上魔法は「リライト」という、自分がしたことを上書きするようなものしか使えない。

アジカンも花やなくしてしまった物(なんについてかはさっぱり具体的に説明してくれない)、空、土手、電車が好きで、iPhoneで小物やご飯をせっせと撮りながら、中途半端に別れたりくっついたりするまあまあ若い人たちを味方につけている。その人々は怒ると浅野にいおの漫画を10巻ぐらい、時速40キロぐらいで投げつけてくるので注意せねばならない。

一番気をつけなければならないのが、アジカンが負けそうになった時だ。とてもくさい汁をかけてくるので相当に危険である。洗濯を普通に3回しても匂いは取れないし、クリーニング店で脱臭をお願いしても断られるほどだ。

自分が一体何を伝えたいのか迷走しているので、今日はこれぐらいにしておこうと思う。

そして、どうしてもこれを聴いてほしい

ベル - Bump of Chicken 歌詞付き (英語のも)
ベル - Bump of Chicken 歌詞付き (英語のも) - YouTube



切符をなくして、ホームで猫背になってからどうしたのだろう。全区間の運賃を払ったのか、駅長室でこれから気をつけなさいで済んだのかが気になってしょうがないのに、訳のわからない抽象的な歌詞でごまかされてモヤモヤしたまま。駅に降り立って切符がないというエマージェンシーな事態にはラララじゃ乗り切れない。どうしたんだよその後…… 教えてよ藤くん……